「古と今の幽玄美を感じて」 姫路市のアーツ&ライフ・プロジェクト 世界的芸術家・杉本博司氏を招聘

文化・歴史

阿弥陀如来坐像を背に、プロジェクトの意義を説明する杉本博司氏(右)と圓教寺の大樹玄承住職

 地域文化・観光資源とアートのコラボレーションで姫路市の魅力を発信する「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」の2022年度事業が始動した。姫路市立美術館(兵庫県姫路市本町)が2021年度から始めた4カ年の取り組み。段ボールを用いた作品で有名な日比野克彦氏に続く2年目の招聘アーティストは、日本を代表する現代美術作家で、ニューヨークを拠点に活躍する杉本博司氏(74)。

 第1弾として、書写山圓教寺(同市書写)で普段は非公開の国指定重要文化財「常行堂」を舞台に、同じく国指定重要文化財「阿弥陀如来坐像」と杉本作品のインスタレーション(空間芸術)「五輪塔─地水火風空」を展観している。

 常行堂はかつて、阿弥陀像の周りを昼夜90日間歩き続ける「常行三昧」という修行に使われていた神聖な場。杉本氏は、世界中の海を撮影した代表作「海景」を映した高さ約15センチの光学ガラス製五輪塔18基を阿弥陀像の周囲に配置し、常行三昧の様子を表現したという。「自然光が一番美しい」と杉本氏が話すとおり、堂内は人工照明を一切使用せず、新緑の柔らかな自然光に包まれた五輪塔が阿弥陀像とともに神々しさを放っている。

 杉本氏は母親が高砂市出身で幕末の儒学者・菅野白華の末裔にあたり、播磨と縁が深い。杉本氏によると、白華は水戸藩の反幕活動に加担しているとみなされて姫路で幽閉され、出獄後は姫路藩校好古堂の督学(監督者)を務めたという。

 このほど開かれた内覧会で「このような由緒正しい場で作品を発表できることは至福の至り。先祖に呼ばれたと感じる」と感慨深く語っている。 令和4年度「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」の「圓教寺×杉本博司 五輪塔─地水火風空」は、書写山圓教寺の常行堂で、8月31日までの毎日10時~16時。観覧料は一般500円、高・大生200円、小中生100円、未就学児は無料。入山時には志納金500円別途要(高校生以下無料)。

 第2弾は、圓教寺で映像作品「能クライマックス─翁神男女狂鬼(おきなしんなんにょきょうき)」のインスタレーションと、姫路市立美術館で個展「本歌取り」が9月17日から開催される。

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