国宝姫路城(姫路市本町)で、2月11日から特別公開が始まる。1989年から数えて36回目となる今回は、現存する最大の城門「菱の門」の内部をお披露目する。世界遺産登録30周年の記念事業の一環。
菱の門は国指定の重要文化財で、門の上に櫓(やぐら)を設けた櫓門という種類に分類される。柱と柱を上部でつなぐ冠木(かぶき)に木製の花菱(はなびし)が飾られていることが名前の由来となっており、黒漆塗りに桐紋のついた飾金具を打った格子窓と火灯窓に、桃山時代の優美で豪華な雰囲気を残している。
2022年夏に白漆喰壁や屋根瓦の保存修理が完成したばかりで、なかでも2階櫓部に立ち入って内部構造を観覧できるようにするのは、昭和の大修理以降で初めてのこと。
また、櫓内では、姫路藩主・酒井家が所有していた黒漆塗長持と、酒井家家老の河合寸翁が愛用した硯(すずり)も初公開。
長持は徳川家や松平家を示す葵紋が入っており、酒井家と幕府との深い繋がりをうかがい知れる貴重な資料。安永3年(1774)に酒井忠以が高松藩松平家から嘉代姫、あるいは天保3年(1831)に酒井忠学が将軍家から徳川家斉の25女・喜代姫を迎えた際の嫁入り道具だった可能性がある。
一方の硯は寸翁が好んで収集したとされ、墨を磨る部分が摩耗で大きく凹んでいることから、寸翁が多くの文書をしたため、藩の財政再建のため奔走したのではないかと想像力をかき立てさせる。
3月12日までの30日間、9時から16時30分まで。観覧料は大人・小人200円(別途姫路城の入城料が必要)。