【今こそ人間学vol.3】事業を正しく大きくするために念ずる言葉(一般社団法人 令和人間塾・人間学lab. 理事長 竹中栄二)

コラム

 平成9年3月、関西師友協会の主催で先師安岡正篤先生の生誕百年記念大会が大阪都ホテルで開催されました。私は同協会の青年部長を拝命しておりましたお陰で、記念講演会で講師を務められた稲盛和夫氏(京セラ創業者)と名刺交換する機会を頂きました。
 この時、稲盛氏は私のような一介の若造にとても丁寧な対応をしてくださった上、握手をして「今後も頑張ってください」と言葉を掛けてくださいました。当時の感激は今でも鮮烈に覚えています。
 ふっくらとした肉感のある温かい手でした。その温もりをさらに印象付けてくれたのが、講演の中で述べられた「動機善なり哉、私心なかりしか」でした。


 京セラは小さな町工場から出発し、技術革新でどんどんと新しい事業を生み出してきました。その際に必ず念ずるのがこの言葉だそうです。
 実業家の稲盛氏が事業に利益を追求するのは当然のことです。同時に稲盛氏は、「自分たちが取り組もうとしている事業が世の人々の役に立つものであるか」「事業化する動機は正しいものだろうか」「自分たちだけ儲ければいいという私心はないだろうか」ということを常に自問自答されたのです。
 昭和〜平成の大実業家たる稲盛氏が鬼籍に入られた今日、「今だけ、金だけ、自分だけ」をモットーのように生きている人が多いように思えてなりません。事業を正しく大きくし、事業の永続的発展を遂げるにはやはり、「動機善なり哉、私心なかりしか」のような確乎たる信念が経営者に必要ではないでしょうか。

◎師友協会とは、大正、昭和の東洋思想家・安岡正篤師の呼び掛けによって発足した政治哲学の学術団体。安岡師の没後は関西師友協会が中心となり、安岡師の講話・著書を伝承してきたが、会員数減少のため令和3年3月末に解散。新たに令和人間塾・人間塾lab.が創設され、事業を引き継いでいる。

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