〝右手に浪漫、左手に算盤〟を合言葉に、業界イメージの向上に挑戦
「キツい」「汚い」「危険」という3Kワードに、「休暇が取れない」や「結婚できない」などが加わり、毎年の新卒採用にも悪戦苦闘する建設業界。そんな8Kとも揶揄される業界イメージを少しでも向上しようと奮闘しているのが、姫路市の老舗建設会社「北村工務店」。4代目の北村聡一郎社長(52)は「当社も時代と共に変わらねば。〝右手に浪漫、左手に算盤〟の精神で、新しい建設会社像を描いていきたい」と話す。
北村工務店本社
──昨年、創業100周年を迎えた。会社の成り立ちと仕事内容は?
1920(大正9)年に旧今宿村で曽祖父が酒の小売商をしながら大工棟梁を始めたのがルーツ。2代目の祖父も「北村組」の棟梁として多くの弟子を養成、61(昭和36)年に組織を法人化して初代社長に就いた。創業から会社創立期は近所の住宅新築や改修をさせてもらっていたそうだ。父の代では市内初となる鉄筋コンクリート(RC)造住宅も施工させてもらったと聞く。
──時代の流れで顧客や仕事はどのように変化した?
会社の規模が少し大きくなると、官公庁発注の工事も手掛けるようになった。それでも主軸は民間工事。経済成長と歩調を合わせるように企業や団体の建物、つまりB to Bの仕事が拡大していった。最初は小さな工事から始まったが、紹介が紹介を呼び、特に地元で頑張っておられる元気な企業の皆さんから指命してもらえるようになった。そんな流れの中にあって、「地元でかわいがってもらってこその我々の商いだ」という流儀だけは大切にしてきた。おかげで、経営者が代替わりしても変わらず付き合いを続けてくださるお得意様に支えられている。先日もあるお得意様が、半世紀前に当社が施工した事務所の建て替え工事を特命で発注してくださったのだが、非常に光栄なこと。
──地元に根ざして長年にわたり事業展開する者同士、相通じるものがあると。
やはり播州は人情に厚い土地柄なので、誠実に仕事をすれば、その姿勢を評価してくださるということではないか。そもそもクレームが少なくない業界だから、従業員にはいつも「建てた後のお世話が何より大切。気配りを忘れないように」と言っている。建物を長く守り続けようという考えは、大工の時代から受け継がれた当社のDNAでもある。