【今こそ人間学vol.9】 郷学振興で次世代の有為な人財を育成すべし

コラム

 私たちのまち姫路にはかつて、好古堂という藩校をはじめ、私塾・寺子屋がいくつもありました。江戸時代には全国に三百諸侯、二百六十余藩があり、これらの藩は藩主を頂点に君臣が強固な絆で結ばれていました。藩主は自藩の隆盛のため、独自の殖産興業と藩民の教化に力を注ぎました。武士の子は藩校に学び、庶民の子は寺子屋に学びました。その結果、藩内の社会秩序が保たれるとともに、高い道義心が全国隅々まで行き渡ることになりました。
 各藩で底辺の庶民にも学問・教育・信仰が施されていたことは、幕府(中央の支配階級)に腐敗が生じた江戸末期においては他国のように欧米列強に侵略されることなく、近代国家の建設、つまり明治維新という大業を成し遂げることにもつながりました。
 今日の日本は幕末の頽廃と同じように見えます。問題は、当時のような教化がなされていないことです。先の大戦後、GHQによる日本解体政策が実施され、国民の精神の拠り所となる日本の歴史、偉人・先哲の抹消が続けられてきました。インターナショナルやグローバル化という言葉に踊らされて現代人の足元が疎かになっています。
 しかし、これを正すのに国家レベルの教育改革をしていては時間がかかり過ぎます。そこで、私たちは江戸時代の各藩校の教育にならい、地域に根差した人材教育を提案していきたいと思料しています。郷土には必ず偉人・先哲が存在します。その人たちの人物や事績を顕彰し、地域からやがて日本全体を見渡せる人物の育成を急がねばなりません。
 幸いなことに20年程前から全国藩校サミットという活動が始まっています。これは、各地にあった藩校の教育を見直して郷土の学問(郷学)を振興し、地域から次世代の有為な人財を生み出すことを目標としています。
 姫路市は立派な藩校があったにも関わらず、これまでこの集まりに誰も参加できていませんでした。今年開催される折には私たちも是非参加し、「はりま」の隆盛を目指して狼煙を上げたいと考えています。

(一般社団法人 令和人間塾・人間学lab. 理事長 竹中栄二)

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