神聖であるはずの神輿をぶつけ合う荒々しい光景で「灘のけんか祭り」との異名をとる松原八幡神社(姫路市白浜町)の秋季例大祭(10月14、15日)まで一月半となり、前年に傷んだ神輿の修復作業に取り掛かる神事「鑿入(のみいれ)祭」が9月3日、同神社で行われた。
同大祭では氏子地域の旧7カ村から絢爛豪華な屋台が1台ずつ練り出されるが、7年ごとに巡ってくる「年番」に当たる村だけは本宮の15日に屋台を出さず、3基の神輿を担いで御旅所に渡御することになっている。その道中で見せる神輿のぶつけ合いが呼び物になっているのだが、これは同神社祭神でもある神功皇后が三韓出兵の帰途に播磨灘に立ち寄り、船同士を擦り合わせて船体にこびりついたゴイナ(カキ)を落としたという故事に因んだ神輿合わせと呼ぶ習わし。激しければ激しいほど神が喜ぶと言い伝えられている。ただ、これによって神輿は屋根に穴が開くなど著しく損傷するため、毎年年番の村が修復するしきたりになっている。
今年の年番は旧木場村。この日は木場の練り子約200人がシンボルカラーの緑色のはちまきを巻いて参加し、傷ついた3基の神輿で神輿合わせを練習した後、拝殿に神輿を納めて神事に見入った。
神事では神輿の前で神職が祝詞を奏上、続いて木場の大工棟梁が修復用材木に鑿を打つ儀式を行い、最後に住民を代表して木場総代の戸崎寿人さんら祭典役員が玉串を捧げた。神事が滞り無く終わると、戸崎さんが「祭り本番は怪我なく、木場らしい統率のとれた神輿合わせを見せよう」と集まった練り子に呼びかけて拍手を受けた。 修復された神輿は10月1日の奉据祭でお披露目される。