播磨一円の名所を江戸時代の図絵と直近のカラー写真で見せるユニークな冊子が出版された。
まとめたのは的形・湊神社(姫路市的形町的形)の名誉宮司、神栄赳郷氏(88)。神栄氏は約40年前に山陽電鉄の広報誌で沿線の古社名刹を紹介する「播磨名所今昔記」を2年間連載した経験もあり、江戸時代の文化元年(1804)に出版されてベストセラーになった当時の旅行ガイド本「播州名所巡覧図絵」のような冊子をいつか出版することを目標にしていた。
実現を遠のかせていたのは「図絵の構図と同じ俯瞰写真を載せて今と昔を対比する」との構想で、技術と費用の両面がネックになっていたのだが、数年前からドローンカメラが普及し始めたことが状況を好転させた。
知人にドローンの操縦ライセンスを持つ写真技能士を紹介してもらい、2022年春から1年3カ月かけて東の須磨浦公園から西の赤穂御崎まで84カ所を一緒に回ってほぼ全てを空撮した。中には宗教上の考え方や事後のトラブル懸念などを理由に撮影を断られたケースもあったが、それも思い出になったという。今春、米寿を迎えたのと同時に刷り上がった。
名所の紹介文は「播州名所巡覧図絵」と後年の復刻版「明治新撰・播磨名所図会」を底本に神栄氏が書き下ろしたもので、図絵に記載されている文章も現代仮名遣いにして載せている。
200部を作成し、半数は友人や神社関係者に配布、残りを希望者に頒布する。神栄氏は「名前を知っていても来歴を知らない名所が案外多い。若い人たちが地元の名所を再認識するきっかけになればうれしい」と話している。
A4判、318ページ、3200円。申し込みは同神社社務所内の郷土志社(電話079-254-0613)。