宍粟市で大正から昭和にかけ木材を運んだ波賀森林鉄道(林鉄)が、地元のリゾート施設「フォレストステーション波賀」(同市波賀町上野)で復活した。
林鉄は県内有数の森林地帯である同市北部で1916(大正5)年、良質な木材を搬出する手段として開鉄され、鉄道網が完成した1924(大正13)年には総延長が40キロに達したと伝わる。半世紀にわたって地元林業を支えたが、脱線がない安全なトラック輸送が広がったことで1968(昭和43)年に閉鉄した。今も波賀町には往時の面影を残す遺構が残っている。
林鉄復活プロジェクトは、住民有志の波賀元気づくりネットワーク協議会が「誇れる波賀の宝を観光用に甦らせよう」と2016年から取り組み始めたもの。2020年に富山県の立山砂防事務所からディーゼル機関車を譲り受け、昨年8月には108メートルの試験コースを手作りして地域住民向けの試乗会を不定期開催してきた。その後、クラウドファンディング(CF)も活用して協力金を募り、林業最盛期から100年目の今年、総延長678メートルの周回コースが完成した。10月26日に地域の子どもたちがレールに最後の犬釘(枕木に固定する釘)を打ち付けた後、車両に乗り込んで〝ファーストラン〟を楽しんだ。
一般観光客が乗車できるようになるのは来春から。その前に駅舎を建てるため、同協議会は500万円を目標に新たなCFを開始している(12月23日まで)。第二幕のスタートにあたり、松本貞人会長は「林鉄遺産の資料を展示して波賀の歴史を知ってもらいたい。何より子どもからお年寄りまで皆の笑い声が聞こえる駅舎にしたい」と声を弾ませた。