環境機器の有力メーカーの地位はどのようにして確立したのか。
1980年代から日本企業の海外生産移転が進んで安価な製品が日本に持ち込まれるようになり、「これからは技術力を前面に、マネされない製品を」と環境機器を中心にエンジニアリング部門(機器の設計・施工及び保守点検業務)に一層注力していったことが大きい。新しい装置は時の経過とともに大手企業が自前で作るようになり、徐々にガデリウスが衰退してきたので、海外技術の集塵機を〝梶原ブランド〟として扱うようになった。それでも最初は営業先で相手にされず、価格を潜ってようやく口座を開いてもらうという案配。20年も経ってようやくメーカーとして独り立ちできるようになり、国内の製鋼トップ3が設備更新を検討される際には必ず声を掛けてもらえるまでになった。よくやってこれたなと不思議な感慨だ。
産業界全体にSDGsという壁が立ちはだかるが、自社の課題は。
脱炭素という時代の大きな波をどう乗り越えていくか。一例として、スートブロワは石炭や重油がアンモニアや水素に取って代わるにしたがって徐々に活躍の場がなくなると考えられるので、その事業を補てんしていかなければならない。ただし、環境保全や省資源の流れは当社にとって大きなビジネスチャンスだとも認識している。
具体的には。
定番製品の熱交換器は、そもそも省エネ装置なので受注が堅調。集塵機もエコには欠かせない。ほかにも有害なVOC(揮発性有機化合物)を吸引して自燃させる脱臭装置という浄化機器があるのだが、最近需要が伸びている炭素繊維、いわゆるカーボンナノチューブを製造する際にもVOCが発生するので、化学メーカーから引き合いが増えている。このチャンスに乗じるため、工事部門を新しく社内に立ち上げた。従来は専門の施工会社が担ってきたこれら装置の据え付け工事を自前で行うことで、装置の基本計画・設計から製造、施工、メンテナンスまで一気通貫でサービス提供できる体制を構築していく。次の100年を「環境」と「エネルギー」をテーマに切り拓いていきたい。
事業は「鉄工所」の枠に収まらない様子。
実際に採用のことを考えると、若い社員からは「社名を変えた方が良い」という意見がある。一方でベテラン社員には現社名にものすごい愛着を持つ者が多い。3年後に迎える110周年の記念プロジェクトとして、変えるか否か、社員に投げかけたい。
株式会社梶原鉄工所 姫路市飾磨区恵美酒441 Tel.079-235-6151 https://www.kajiwara-ltd.co.jp
2