タラリスM&Aについての記者会見の模様

それから⼤証で17年間。いつしか「⼤証⼆部の横綱ですね」とからかわれたりするようになってね。当然、東証⼀部という⽬標もあったんだけれど、そのためには販社のグローリー商事を「上場させる」「100%⼦会社にする」「合併する」という3つの条件から1つをクリアする必要があった。

このうち「上場」は、あの時と同じ苦労をするのはとてもじゃないけれど無理やと。「合併」は、いくら同じグローリーと⾔ってもメーカーと販社はなかなか波⻑が合わないんやね。「ワシらがええもん作っとるから売れるんや」とか「ワシらが頑張って売っとるから飯が⾷えるんや」とかね。そのような事でガチャガチャあったりしてね。それで「100%⼦会社」にすることを選択したわけです。

ところが、商事の株を時価で買ったら80億円くらい要る。とてもやないけれどそんな大金出せない。そんな時に議員⽴法で株式交換制度の法案が成⽴することを聞きつけて、若い担当者らがゴールデンウイーク返上で資料整理をやってくれてね。結果、⼯業が350万株を増資して商事に割り当てるという⽅法で100%⼦会社化した。これも嬉しかったね。やれやれと思ってね。

その後、⼤証に依頼の手続きをして2000年9⽉に⼀部に昇格させてもらった。それで12⽉に無事東証⼀部に上場できたんです。東証⼀部の⼗両になれたのか前頭になれたのか分からんけれども、30年ほどかけて最終⽬標を達成できた。創業者の〝求める⼼〟を継承した私の仕事も終わった。本当に嬉しかったですな。

私は89(平成元)年から2001(平成13)年まで社⻑だったのですが、その時のテーマは〝国際化〟と〝⼈材育成〟。将来は海外で売上を伸ばしていかないかんだろうと。しかし、その時代、やっぱり⽇本は英語を喋れる⼈も少なく、難しかったんです。私が社⻑の時には、海外売上10%を⽬標に⾊々やって努⼒してくれたけどね、結局8%くらいでしたかな。

それから⻄野秀⼈が社⻑になってね、商工合併も敢行し、海外売上を17、8%くらいまで伸ばしてくれたんです。その後ももっと増やさないといかんぞ、と頑張っていた時に、カーライルという投資会社が世界中に紙幣計数機の販売網を持つイギリスの会社タラリスの買収話を持ってきたわけです。⾦額は800億円でした。

社⻑は今の尾上広和に交代して、すでに私は会⻑から相談役に退いていましたけれど、800億というのはグローリーにとっては⼤⾦だからね。社長がどうしても買いたいと相談に来たので、君に任すと賛成しました。

私が気になったのは、いくら会社を買ってもソフト、すなわち従業員が同じ⽬標に向かって頑張ろうというムードがなかったらいかんということ。タラリス買ったけど従業員が辞めてもぬけの殻ということになったらね。これを⼀番⼼配したんだけれど、結果としては、国内と海外の売上⽐率が半々にまでなり、今のところ買収して良かったといえるでしょうね。 (つづく)

尾上壽男(おのえ・ひさお)昭和10年姫路市生まれ。34年中央大理工学部卒、36年に国栄機械製作所(現・グローリー)入社。平成元年に社長、13年に会長に就き、26年から同社名誉会長。姫路商工会議所会頭、姫路市教育委員、兵庫県公安委員、姫路観光コンベンションビューロー理事長などを歴任。17年、旭日中綬章受章。

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