姫路市は、総務省消防庁による「マイナンバーカードを活用した救急業務の迅速化・円滑化に向けた実証実験」に2022年10月から2カ月間参画した成果をこのほど発表した。
同実験は、救急搬送時に健康保険証と紐付いた傷病者のマイナカードを活用し、救急隊員が既往歴(過去にかかった主な病気の記録)や薬剤情報をオンライン閲覧することで業務にどのような効果があるのかを調査するのが目的。姫路市以外にも熊本市や前橋市など全国6自治体で実施された。
姫路市では、5救急隊が出動した1936件で調査実施した。すると、実験当時のマイナカード所持はまだ全体の20%に満たない369件しかなく、なおかつ健康保険証利用対応は同5%の105件だったが、その中から本人が個人情報の閲覧に同意したケースは8割の84件に上った。
また、実際の救急現場では、痙攣発作を起こした男性の主治医が搬送前に判明したことで情報共有がスムーズに進んだ例や、視覚障害があり耳も聞こえにくい高齢者の情報を正確に把握できた例など、業務が円滑に進んだ事例が報告され、事後のアンケートでも消防機関と医療機関の双方から「情報取得に有用」との声が多く上がった。
一方、迅速化という点では、車両収容から出発までの時間が通常より長くなったケースが発生するなど課題も見えた。これは、傷病者に高齢者が多いことと、情報照会の専用機器が救急搬送向けの仕様でないことから本人確認と個人情報閲覧の同意手続き、情報アクセスに手間取ったことが理由。
消防庁では2025年度からの本格運用を目指しているが、そもそもマイナカードの普及や健康保険証との紐付けが進まなければ、コストに比して大きな効果が得られない。また、適切なシステムの開発やセキリュテイ対策、個人情報閲覧に関する法整備なども必要。姫路市救急課は、「引き続きマイナ保険証の活用推進を進めながら、システムの全国展開を目指して消防庁に協力していく」と話している。