日本有数の暴れ川、揖保川にある「畳堤」を紹介するパネルがたつの市龍野町下川原の揖保川沿いにある市営駐車場にお目見えした。2022年度に公益社団法人土木学会の「選奨土木遺産」に選ばれたことを受け、揖保川を管理する国土交通省姫路河川国道事務所が「歴史と文化を継承してほしい」と設置した。
畳堤は、普段は美しい揖保川の景観を損ねないよう作られた全国でも珍しい特殊堤防。
そもそも揖保川では古くから水害の記録が多く、特に梅雨時や台風の季節には頻繁に大水害が発生していた。1945年には堤防が何度も決壊して濁流が民家や田畑を飲み込む被害が続出、ついにコンクリート擁壁の堤防を建設することになった。しかしこの時、周辺住民が「眺望を守ってほしい。洪水時には住民も協力する」との声を上げたことを受け、岐阜県・長良川を参考にして畳堤が整備された。
通常の堤防と異なり、平常時には橋の欄干のようなフレームの間から川の流れが見渡せ、緊急時はフレームに畳を差し込むことで堤防として機能させる。水分を含んで膨張し、強度を増した畳が川の決壊を防ぐ。
使う畳は本間サイズ。設置作業は土のうを積むより手軽なのだが、近年の畳は小ぶりな団地サイズが主流になっているため、あらかじめ市が水防倉庫で本間サイズをストックしている。2018年夏の西日本豪雨の際には、実際に畳をはめ込んで増水に備えた。
パネルには、畳堤の使い方や地域の自治意識の高さ、土木遺産に認定された経緯を分かりやすく掲載。同時に、駐車場前の堤防フレームに畳で作った案内看板を差し込み、常時見学できるようにした。
同事務所の池田大介所長は「市民や観光客が水害について考えるきっかけになれば」と話している。