上郡町は、日本の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す国の政策「みどりの食料システム戦略」に参画、同町が地域ぐるみで有機農業に取り組む産地であることを表明する「オーガニックビレッジ宣言」を行った。同宣言を行った市町は兵庫県内で9例目、西播磨地域では初めてとなる。
この戦略は、化学肥料や農薬など環境にかかる負荷をできる限り抑えて栽培した有機農産物を見直し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民も一体となってその生産・流通・消費活動に取り組む市町村を国が支援するもので、2021年度に策定された。具体的には、先進的なモデル地区と位置付けるオーガニックビレッジ宣言自治体が有機農業指導員の育成・確保やバイオ液肥・バイオ燃料の導入、バイオマスの地産地消を進めるための施設整備などを行う際に補助金が交付される。農林水産省はオーガニックビレッジを2025年までに100市町村、2030年までに200市町村創出することを目標に掲げ、全国各地での産地づくりを推進することにしている。
同町では近年、食の安全性や環境意識の高まりから有機農業者が少しずつ増えている。とはいえ、その数はまだ総数234の4%に過ぎない10経営体、耕地面積も全体約670ヘクタールの2%に満たない12ヘクタールだけで、栽培方法や販路開拓も個別の取り組みに留まっているというのが現状。そこで、食料を通じた子どもの健全育成、新たな農業の魅力づくりといった観点も踏まえ、町を挙げて有機農業の取り組みを強化することにした。一連の活動を通じて、山々に囲まれた中央部を清流千種川が流れる〝水と緑のまち〟の次世代への継承にも繋げていく。
すでに2年前から農業者や食育関係者のネットワークづくりに着手しており、昨年8月には有機農業推進協議会を立ち上げて勉強会を実施、認定こども園の給食への有機食材提供も開始した。今年3月には今後の有機農業への取り組み指針を示した実施計画も策定した。
今後は同計画に基づき、▽有機作物の地産地消に向けた栽培技術の向上や販路開拓▽直売所などへの特設コーナー設置▽こども園と小・中学校の給食や町内飲食店での有機作物の活用─などに取り組んでいく。
5年後に有機農業者数15経営体、農業面積17ヘクタールを目指す。
同町の梅田修作町長は、「有機農業を推進することで〝子どもと自然環境をより大切にするまち〟を実現したい」と話している。