世界文化遺産・国宝姫路城について2026年春からの入城料改定を目指している姫路市は、開会中の市議会定例会で新料金案を提示した。
石見和之議員(自民党)と杉本博昭議員(新生ひめじ)からの質問への答弁と市議会経済観光委員会での報告で詳細説明したもの。それによると、現行1千円の大人料金(18歳以上)を2~3千円程度に引き上げる一方で姫路市民に限っては現行程度に据え置きし、現行300円の高校生以下料金(小学校就学前は無料)は全て無料にするという。また、市民以外の大人のリピーターを獲得するため、2回分の入城料で設定する年間パスポートの販売も検討する。清元秀泰市長がオーバーツーリズム(過剰観光)対策の一案として示していた外国人向けの二重価格設定は見送った。
引き上げ幅の根拠となるのは、姫路城の今後10年間の管理運営や保存修理の必要経費のほか、観光消費額アップや滞在型観光の推進に資する事業費で、過去10年間に行った工事などの経費(約145億円)をベースに物価高騰や社会情勢の変化を加味しながら算定作業をしていくことになる。
市は、姫路城を構成する建造物や石垣の補修以外に、これから必要と考える事業として、▽御屋敷跡庭園「好古園」の改修▽大手前公園地下駐車場の改修▽動物園の動物移転や獣舎の撤去▽インバウンド対応▽デジタル化─などを挙げる。
好古園では外国人の利用も見据えたレストラン「活水軒」の充実や夜間開園のための改修に取り組み、地下駐車場では消火施設や換気設備の更新と耐震補強を行う予定。動物園は、移転後の跡地に御作事所出丸(城の建築や修理を司った作業所)の復元を検討していることから、移転準備作業の進捗を見ながら発掘調査に着手する。
インバウンド対応とデジタル化では、QRコードを活用した日時指定のデジタル入城チケットを大阪・関西万博の開催期間前後(来年4月12日〜10月14日)に試験導入し、国内外からの万博来訪者へ姫路城を訴求するほか、今後の保存修理に活用するため製作中の三次元CGデータを応用して姫路城ならではの体験ができる新たなデジタル展示内容を開発していく。姫路観光コンベンションビューローと協力し、プレミアム体験付き入城プログラムの開発や手荷物の預り・配送に対応した「てぶら観光」の導入も視野に入れる。
また、これら以外に、全国60以上の城郭が加わる広域型の地方創生プロジェクト「デジタル城下町」にも参画を検討する。お城ファンが御朱印を集める感覚で各城が発行する〝町民証〟の収集を楽しめ、城を有する自治体は無料で地元イベント情報を発信できるというオンラインツール。世界遺産・中城城跡(沖縄県)の取り組みを参考に杉本議員が提言し、市は「お城ファンへの効率的な情報発信が期待できる」と前向き答弁した。
姫路城の入城料改定は、「平成の大修理」を終えた2015年3月以来11年ぶり。正式な料金体系は来年3月の定例会で提出される。